生きている地球
~ 環境問題を見る視点 ~

その4 大気水循環と生態系(2001/07/06)

 前回、地球全体が一つの熱機関であり、定常系である事を述べました。同じように、地球上で安定的に行われている部分系の活動もそれぞれが定常系になっています。
 地球はエネルギーについては開放系でしたが、物質については重力の影響でほとんど閉鎖系でした。しかし、地球上で行われる部分定常系の活動は、物質についてもある程度(地球全体としての定常性を阻害しない範囲において)は開放系と考えることが出来ます。
 地球上の部分定常系の一般的な活動は、系外(=地球環境)から材料資源とエネルギー(資源)を摂取して、何らかの活動を行い、活動の結果生じた廃物や廃熱を系外に捨て去ることで定常的な活動を続けています。

 動物は、地球環境から食物、水、酸素を摂取し、食物から呼吸によって活動のためのエネルギーを得ると同時に体組織の材料を得ています。その活動の結果、利用できなかった物質と老廃物、廃熱を地球環境に廃棄します。具体的には排泄、発汗、体表からの放熱などです。

図2 動物の活動
 ここでは単に動物と表記しているが、この動物には昆虫などの小動物、更に地中微生物まで含んだ系を指すものとする。動物系からの出力は最終的に、二酸化炭素と無機物などになる。

 動物の活動は、必要な資源を地球環境から取り込んで、それを分解して地球環境に一方的に捨て去るという特徴があります。その活動は開放系としての地球の機能には結びついていない『閉鎖型』の活動です。もし地球上の生物が動物だけであれば、資源の枯渇か廃物による汚染(=エントロピーの極大化)によって活動は終息します。
 植物は、地球環境から二酸化炭素と水を取り入れて、光から得るエネルギーを使って光合成で炭水化物を合成します。光合成で得た炭水化物を用いて植物体は成長し、自らを維持しています。光合成あるいは成長活動の結果生じた酸素や廃熱を地球環境に捨て去ります。廃熱は植物の表面から大気への伝導や水の蒸散の潜熱として地球環境に捨て去ります。

図3 植物の活動

 動物との大きな違いは、光合成が地球の外から供給される太陽光のエネルギーを使うことによって、開放系としての地球の機能と繋がっている『開放型』の活動だという点です。しかし、光合成の原料である二酸化炭素については、やはり地球の物質についての閉鎖性に制約された『閉鎖型』の特徴も持っています。地球上の生物が植物だけであれば、やはり二酸化炭素の枯渇によって活動は終息します。

 これまで見てきたように、地球上の生物の構成が、動物だけ、あるいは植物だけであればその活動は閉鎖型になり、非定常な状態を経て平衡状態=活動の停止に至ります。地球が定常系であるのは、動物と植物によって構成された『生態系』があるからです。
 第一生産者である植物は地球環境の二酸化炭素と水を摂取して、これを太陽光から得たエネルギーを使って炭水化物を合成します。植物からの廃物である酸素、水(水蒸気)、廃熱が地球環境に捨て去られます。水と廃熱は地球の大気水循環の流れに乗って熱エントロピーを宇宙空間に処分し、また水を供給します。
 植物によって供給される炭水化物は草食性の動物の餌になり、草食性の動物は肉食性の動物の餌になります。動物の多段階の食物連鎖の過程で徐々に分解が進み、最終的には微生物による分解に至ります。その各段階で、植物から供給された酸素を使って呼吸することで活動のエネルギーを得ながら最終的に二酸化炭素と無機物、それに廃熱が地球環境に廃棄されます。廃熱は大気水循環に乗って宇宙空間に処分され、二酸化炭素と無機物は再び植物によって利用されます。

図3 生態系の活動
動物系からの廃棄物である二酸化炭素や無機物は植物系に資源として利用されることによって生態系では完全な物質循環が形成される。

 植物、動物という個別には閉鎖型のシステムが組み合わされ、生態系という一つのシステムを構成することによって、生態系を取り巻く地球という大きな熱機関の大気水循環の持つ開放系の機構に調和したエネルギーの摂取と廃棄、それと物質循環とによって定常性が維持されてきたのです。別の見方をすると、生態系とは、その中に含まれる部分系の物エントロピーを熱エントロピーと有用な資源に分解するシステムだと言えるかもしれません。

~ 環境問題を見る視点 ~ 近 藤 邦 明氏 『環境問題』を考える より

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更新履歴
新規作成:Mar.19,2008
最終更新日:Mar.13,2009