二酸化炭素地球温暖化脅威説

§7.工業技術評価

 第一部で検討した結果、二酸化炭素地球温暖化脅威説には科学的な根拠が無く、地球温暖化問題は虚構である。その結果、地球温暖化問題の原因であるとされ る炭化水素燃料の燃焼による二酸化炭素排出量の削減を意図した新規の工業技術、エネルギー関連技術の開発は、その開発の根拠を失っている。
 現在、温暖化防止対策として提案されている工業技術の多くは、意に反して、二酸化炭素排出量削減という点においてすら、その実効性の乏しいものである。 更に、多段階のエネルギー変換と低効率性は、炭化水素燃料資源以外の希少資源を含む資源の浪費を更に加速するものである。
 ここでは、環境問題を考える上で、どのような点に着目して工業技術を評価すべきかを検討する。

7-1 工業技術のライフサイクル

 工業的にある目的を実現しようとする場合、まず最初に目的を実現するための装置・設備を作ることが必要である。装置・設備が出来上がれば、そこに操業す るためのエネルギーと資源が投入されて、操業を開始する。操業によって、製品と廃物が生産される。耐用年数が経過すると、装置・設備は廃棄され、ライフサ イクルが終了する。
 環境問題を考える上で工業技術を評価するとき、工業技術の全ライフサイクルを通して、そのシステムに投入された資源とエネルギーの総量と、出力としての製品と廃物(装置・設備の廃棄も含む)の総量を対象に検討が行われる。
 製品一単位を生産するために必要な、投入される資源・エネルギー量が少ないほど生産効率の高いシステムである。また、製品一単位を生産することによって 生じる廃物量が少ないほど環境負荷の少ないシステムである。ただし、廃物については、量的な問題もさることながら、その毒性の質による評価も重要である (例えば放射性廃物や内分泌撹乱物質)。
 ここに述べた内容は、ほとんど自明のことであるが、驚くべきことに現在の環境技術に対する技術的な評価はシステム操業時の評価しかしていないのである。その結果、とんでもない間違った評価が横行している。

7-2 迂回度と迂回過程

 工業的にある目的を実現する場合、実現可能な方法は複数存在する。例えば、家庭で湯を沸かすことを考える。ガス湯沸かし器で湯を沸かすこともあれば、電気温水器で沸かすこともある。この二つの湯沸しの方法を、環境問題という視点から検討する。
 ガス湯沸かし器で湯を沸かす場合は、燃料をボイラーで燃焼させ、その燃焼熱で直接水を加熱する。それ以外の装置は不用である。
 電気温水器で湯を沸かす場合は、電気を電熱器を通して熱に変換してその熱で水を加熱する。電気は石油火力発電所で作られる。石油火力発電所では、石油を 燃焼させて水を加熱して高温高圧の水蒸気を発生させ、これで蒸気タービンを回転させ熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。この回転運動で発電機を回し て電気を生産する。電気は送電線を経由して各家庭に送られ、家庭の電気温水器に導かれる。
 この二つの湯沸しの過程をまとめると以下のようになる。

ガス湯沸かし器:
ガス燃焼(熱)↑→水の加熱

電気温水器:
石油燃焼(熱)↑→ボイラー・蒸気タービン(運動)↑→発電機(電気)↑→送電線↑→電熱器(熱)↑→水の加熱
(上向の矢印は、エネルギーの環境への散逸を示している。)

 少し横道にそれるが、工業技術評価の上で重要な点は、前節の議論とも関連するが、ある目的を達成するために行われている全ての工業プロセスをもれなく検 討することである。通常電力会社が宣伝するのは、電熱器以降の最終段階の工程だけである。しかも経済的に安いというのは、発電用の重油が政策的に安価に設 定されている上に、例えば夜間電力という余剰電力のダンピング販売によるのであって、資源効率とは全く別次元の問題である。
 さて、本題であるが、ガス湯沸かし器では燃焼熱を直接水の加熱に使うので、エネルギー損失は一箇所だけである。これに対して電気温水器の場合は、まず石 油の燃焼による熱エネルギーを運動エネルギーに変換し、更に電気エネルギーに変換し、最終的に再び熱エネルギーに変換する。この変換の各過程でエネルギー 損失が発生する。
 ある目的を実現する場合、最も単純なプロセスに対して、より多段階のプロセスが必要な過程を『迂回過程』と呼び、その程度を『迂回度』と呼ぶことにする。湯沸しの例でも明らかなように、『一般に迂回度の大きい過程ほどエネルギー効率は低下する』のである。
 電力会社は、「オール電化ハウスは、二酸化炭素を出さないクリーンな住宅」などといっているが、科学的に見ればそのようなことはあり得ないことである。 特に熱源として電気を利用することは資源の浪費であり、沸かす湯一単位あたりの発生二酸化炭素量はガス湯沸かし器の場合をはるかに上回る。更に付け加える と、迂回度が高いほど設備に投入される資源量も多くなることは明らかである。つまり、より正確には『一般に迂回度の大きい過程ほど資源・エネルギー効率は 低下する』のである。


二酸化炭素地球温暖化脅威説批判 近 藤 邦 明氏 『環境問題』を考える より
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更新履歴
新規作成:Mar.19,2008
最終更新日:Mar.13,2009