WTO関連用語集

UR方式:


UR合意で採用された全体で○○%、個別品目毎に最低で●●%の削減とする方式(UR合意ではそれぞれ36、15という数字が入った)。

スイス・フォーミュラ:

東京ラウンドの際の鉱工業品の削減に使われた方式で、(削減後の譲許税率)=((現行譲許税率)×α)÷((現行譲許税率)+α)の数式で表される。高関税率程大きく削減する方式で、結果的には全ての関税率をα%以下に削減する効果がある。

従価税と従量税:

従価税は金額に対して一定の関税を課し、従量税は数量に対して一定の関税(例:1`当たり●●円)を課す。従価税は価格に応じて関税額が変化する一方、従量税は価格に関わらず関税額は一定となる。その結果、従量税の場合、関税額の予見可能性が高いが、価格が下がった(上がった)場合、従価税換算での税率が上がる(下がる)という事態が生じる。

関税割当:

一定の輸入量までは低関税率(一次税率)で市場アクセスを提供する一方、その輸入量を超えると高関税が課される制度(二次税率)。UR合意で関税化した品目に認められている。現在、日本はコメ(99年に関税化)、小麦、乳製品、牛肉、豚肉、こんにゃく、雑豆等に関税割当を設定しています。

特別セーフガード:

通常のセーフガードよりも緩やかな要件で自動的に発動できる、農産品にだけ認められるセーフガード。UR合意で関税化した品目にのみ認められることから、同制度を利用できない途上国や新規加盟国に不満が大きい。

輸入国家貿易企業:

輸入を国家貿易企業が一元的に管理する制度で、日本で言えばコメ、小麦、大麦の輸入における食糧庁等が該当する。GATT17条に商業的配慮に基づいて行動すること等の規律がある。

AMS(Aggregate Measurement of Support):

助成合計量のことで、いわゆる「黄」の政策と同義であり、削減対象となる(UR合意では20%削減)。
市場価格支持+「緑」の補助金に該当しない補助金の総計で計算される。

総合AMS:

UR合意ではAMS全体からの削減についてのみ規定があり(総合AMS)、個別産品毎にAMSを計算して、削減する義務は規定されていなかったため、合意の実施過程で助成水準が下がらなかった品目があるとの観点から、一部の国は個別品目毎の削減を主張している。

デミニミス(de minimis):

本来、「黄」の削減対象であるが、助成水準が少量のため、削減を免除されること。UR合意では産品特定的なAMSについては当該産品生産総額の5%、産品非特定的なAMSについては農業生産総額の5%がデミニミス水準とされている。
 具体的には、品目を特定した国内支持であればその品目の生産額、品目を特定しない場合はすべての農業生産額の5%以下の国内助成が対象になる。開発途上国の場合は10%まで認められている。わが国では、野菜、鶏卵の価格安定対策などが該当する。

「青」の政策:

本来、「黄」の政策に分類されるが、生産制限計画による直接支払で一定の要件を満たすものについては、「青」の政策として削減が免除される。同政策はUR交渉時、米・EC間のブレア・ハウス合意で盛り込まれたもので、主にEUが活用している枠組み(EUはUR合意実施において、「黄」から「青」へのシフトを強めた)。日本は99年より実施している稲作経営安定対策が「青」の政策となっている。主に食料輸出国は「青」の政策は過渡的なものとして撤廃を求めている。

「緑」の政策:

貿易歪曲性または生産に対する影響がないまたは最小限であり、生産者に対して価格支持の効果を有しないことから削減対象とならない補助金のこと。農業協定附属書2に詳細な規定があり、研究、防除、訓練、インフラ整備等が該当する。食料輸出国や途上国は、仮に「緑」の政策であっても大規模な補助金は貿易歪曲効果があるため削減すべきとしている。

紛争処理:

WTOの紛争処理の手続きでは、小委員会や上級委員会によって出された報告書が採択されて、その内容が確定しますが、その時点で紛争が解決されたのではありません。仮にある国の措置がWTO協定との関係で違法であると判断されれば、その国は、その措置を協定にあったものとなるように措置をとらなくてはなりませんが、最も基本の原則は、速やかに実施されなくてはならないというものです。
 しかし、容易に想像がつくように、措置の性格によっては、国内的に迅速に措置をとることが困難な場合もあります。例えば、ある国の関税が違法であると判断された場合、関税を協定に適合した形に直すためには、税法の改正のような国内手続きが必要であることは想像されます。そうすると、そのような手続きは期間などもすでに決まっており、速やかに実施するといっても簡単ではないものでしょう。それでは、どの位の期間が必要かは状況によって異なるでしょうし、また、実施する国の都合だけで、実施までの期間が左右されることは、申し立て国にとって大きな不利益にもなります。したがって、その措置が違法であると判断された国が速やかに適正化措置を実施できない場合には、当事国間で実施のために妥当な期間をどの位にするか合意するか、その合意ができない場合にはその期間を定めるための仲裁にかけることとなっています。仲裁人は妥当の期間が報告の採択から最大15月を越えるべきでないとの指針が与えられます。 更に、実施の問題を複雑にしているのは、その妥当な期間内に、措置を適合化したといっても申し立て国がそのように判断しないような場合には、今度は、その実施がされたかどうか、措置が適正なものになったかどうかをめぐって、また、小委員会(その該当条文から21条5パネルと呼ばれています)に裁定をあおぐこととなり、ますます実施までの期間がのびてしまうとのケースも増えてきています。これでは、折角小委員会や上級委を通じて紛争案件で勝利してもその意義は減じられることとなり大きな問題となってしまいます。
 このように紛争は最後まで、終わらないということにならないように現行制度を改善することができるかも含めて今後の議論となっています。
パネル報告書と上級委員会 報告書がDSBで採択され、紛争解決手続で訴えられて負けた方が勧告の実施 を求められます。
 一般にこのための手続には勧告実施のための諸手続があり、いつまでに勧告 の実施を終えるかという決まりがあります。通常、この実施のための期間は最 大15箇月です。尤も協議や仲裁の結果でこれよりも短い期間になることもあ ります。したがって、問題が解決するまで更に一年前後を要することとなり、 すべての紛争手続が終了するのには約三年間を要することになります。WTO の紛争処理手続、特に上級委員会までに手続を進めるといかに長い時間を要す るかがお解り頂けたかと思います。ちなみに、あたりまえのことかもしれませ んが、どのような理由であれ、他の当事国の了承なしに勧告を実施しないこと はありえません。仮に勧告の実施が行われない場合には、その時には他の当事 国による対抗措置の実施という途が制度上残されていることを申し添えておき ます。


原典:
WTO新ラウンド交渉メールマガジン
監修・発行:外務省経済局国際機関第一課

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更新履歴 新規作成:Mar.3,2006
       最終更新日:Mar.23,2009

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