第十一章　犯罪及警察


　第一節　犯　罪

　本村民犯罪ノ状況、既往ニ於テ余リ重大ナルモノアルヲ聞カズ。又、記録ノ存スルナク、調査スルニ由ナシ。サレバ近来ニ於ケル犯罪ノ傾向ヲ表示シテソノ如何ナル状態ニ赴キツツアルカヲ示サントス。
　次ニ掲グル犯罪表ハ、裁判所ヨリノ犯罪通知書ニ依リ、違警罪表ハ一関警察署ニツキ調査シ作成シタルモノナリ。

（一）犯罪者調（滝沢分）明治二十八年〜大正四年
　窃盗　　男三一、女四　森林盗伐　　　男　九　森林法違反　　　男　九
　詐欺取財　　男　五　　賭博　　　　　男　三　委託物費消　　　男　二
　殴打創傷　　男　二　　私書偽造　　　男　二　屋外窃盗　　　　男　二
　横領　　　　男　二　　借用物費消　　男　一　私印偽造　　　　男　一
　氏名詐称　　男　一　　拾得物隠匿　　男　一　身分詐称　　　　男　一
　嬰児故殺　　男　一　　放火　　　　　男　二　窃盗未遂　　　　男　一
　監視違反　　男　一　　遺失物法違反　男　一　偽造紙幣行使　　男　一
　持凶器窃盗　男　一　　官反書偽造　　男　一　煙草法違反　　　男　一
　狩猟法違反　男　一　　傷害　　　　　男　一　火薬法違反　　　男　一
　骨牌法違反　男　一　　逃亡罪　　　　男　一　牛馬取締法違反　男　一
　
（二）違警罪調（眞瀧村）明治四十年〜大正四年
　荷馬車ニカカルモノ　一五四　乗馬ニ関スルモノ　　一五　諸届ヲ怠リタルモノ　九
　放尿　　　　　　　　　　六　酪酔　　　　　　　　　七　鉄道立入　　　　　　六
　畜犬　　　　　　　　　　四　馬逸走　　　　　　　　四　呼出不応　　　　　　二
　裸体　　　　　　　　　　三　通行妨害　　　　　　　二　諸処徘徊　　　　　　二
　狩猟免許状ニカカルモノ　二　認可ヲウケズシテ　　　一　墓地伐木　　　　　　一
　飲食物ニカカルモノ　　　一　吉凶占福ニカカルモノ　一　販売ニカカルモノ　　一
　手数料不正ニカカルモノ　一　臀部露出　　　　　　　二　不正秤使用　　　　　一
　（拘留　二百九十回）

（三）自家用酒の醸造及酒税
　明治十三年、初メテ酒類製造販賣者ニ一石二円ノ課税アリタルヲ初メトシテ、當時一石以下ノ自家用醸造者ハ無税ナリキ。明治十五年ニハ、清酒醸造税一石四円、自家用ハ八十銭トナレリ。明治十九年ニ至リ、自家用清酒醸造ハ禁止セラル。ソノ後、明治二十八年ニハ、石七円濁酒ハ六円トナル。尚、自家用醸造ハ全廃トナリタリ。ソノ後、酒税率ハ年ヲ逐うヒテ増加セラレ、濁酒密造者ハ違反トシテ検挙セラル。

（四）本村ノ酒税法違反者
　前項ノ制度ニヨリ、本村民ハ皆、明治二十二年迄ハ自家用酒ヲ醸造シ、盛ニ飲酒ヲナシ居リタルモノナリ。サレバ一朝全廃セラルルト雖モ、旧慣一時ニ脱セズ、濁酒密造ノ風盛ニシテ年々違反者ノ検挙セラルルハ、実ニ遺憾トスル所ナリ。
　今、明治四十年ヨリ大正四年ニ至ル九ヶ年間ニ検挙處分セラレタルモノ、及其ノ罸金額ヲ掲グレバ、左ノ如シ。

一 一 〇 円	三 人	明 治 四 〇 年
一 八 〇 円	四 人	明 治 四 一 年
一 七 〇 円	四 人	明 治 四 二 年
五 二 〇 円	一 〇 人	明 治 四 三 年
五 三 〇 円	八 人	明 治 四 四 年
五 三 〇 円	二 九 人	明 治 四 五 年
七 八 五 円	二 三 人	大 正 二 年
三 七 五 円	一 二 人	大 正 三 年
四 〇 〇 円	一 〇 人	大 正 四 年

（附）郡内各村違反者数（昭和三年調）

一 〇	永 井
八	涌 津
一 四	油 島
四	花 泉
三	金 沢
二	老 松
一	日 形
三	弥 生
一 二	眞 瀧
三	一 関
一 九	萩 荘
二 〇	厳 美
三	山 目
三	中 里
八	平 泉

（五）本村火災ノ原因（附・西沢大火ノ事）
　本村ハ從来、火災ノ多キ方ニアラザルガ如シ。其ノ最モ多キハ山火事ニシテ、ソノ大部ハ通行人ノ弄火・不注意ヨリ発火シ延燒スルニ至リシモノナリキ。然ルニ、鉄道開通後ハ沿道附近ハ、汽車ノ飛火ノタメ、年々歳々、延燒スルコト敢テ珍シカラズ。サレバ、早春未ダ青草青葉ニ至ラザル時季ニ於テハ、大イニ警戒ヲナサザルベカラズ。
　家屋建物等ノ火災、維新以降ニ罹レルモノヲ原因別ニ掲グレバ、
一、山火事ヨリ延燒セルモノ
一、提灯ノ火ヨリ起ルモノ
一、竈ノ火ヨリ起ルモノ
一、小児等ノ弄火ヨリ起ルモノ
一、灰ノ始末悪シキタメ起レルモノ
一、放火
一、炬燵ヨリ起レルモノ
一、原因不明
　以上ノ如クナルガ、就中、山火事ヨリ延燒セルモノニテ、其ノ損害ノ大ナリシハ、明治七年四月五日、眞柴字西沢ノ大火ナリトス。山火事発火時刻ハ、午前九時頃。場所ハ亀ノ倉ノ山奥大森山林中ニテ、遠ク畑ノ見ユルヲ以テ、村民ハ唯一人之レニ注意スル者ナク、皆、野良ニ出テ働キ居リタリ。然ルニ、春季ノコトナレバ、漸次、西風烈シクナリ、從テ山火事モ又拡大シ、其ノ火勢風ニアフラレテ益々熾ニナリ、午前十一時頃、遂ニ亀ノ倉小岩官助宅ヲ燒拂フ。其ノ火ノ手ハ烈風ノタメ四方八方ニ飛散シ、遂ニ西沢全部ニ延燒シ、十九戸ノ本屋・附属建物等全部ヲ燒失シ、午後三時頃西沢ト東沢トノ境ナル館山ノ頂上ニ至リテ、漸ク鎮火ヲ見タリ。西沢中此厄ヲ免レタルハ小田屋敷一軒、藤後沢屋敷四軒、佐野屋敷三軒、的場屋敷二軒ニ過ギザリキ。此ノ日ヤ、神ナラヌ身ノ如何デカカルコトアルベシトモ知ラズ。他出セルモノ多キハ、且ツ、カク迄速カニ延燒スルモノト思ハズ。他家ヘ手伝ニ行キ不在中、自分ノ家ニ飛火シ熾ニ燒失セルアリ。漸ク取出シタル家財道具モ風烈シキ故、飛火ノタメ遂ニ全部燒失シテ一物モ留メズ。其ノ惨状実ニ名状スベカラザリシナリ。以テ其ノ損害ノ如何ニ莫大ナリシカヲ知ルニ足ルベシ。


　　第二節　眞瀧村消防組
　
　明治初年、滝沢邑ニテ「いろは組」ナル消防組様ノモノヲ初メタルヲ以テ初メトス。ソノ後、鬼死骸村ニモ同様ナモノアリタルモ、アマリノ発達ヲ見ズ。
　ソノ後、明治四十三年、岩手縣ハ本村ニ消防組ヲ組織スベキ指定アリタルニ當リ、狐禅寺方面ニ於テ着々寄附ヲマトメ着手セルモ、進歩セザリキ。
　ソノ間ニ於テ、火災予防組合ナルモノ村ニ組織セラル。然ルニ眞柴部落ニ於テハ、更ニ明治四十五年、各種消防組合ノモノヲ用意シ、火防組合ヲ組織セリ。ソノ後、大正元年十月三十日ヲ以テ、現消防組ヲ組織任命セラルルニ至レリ。
　　組頭　熱海　懿　　第一部小頭　阿部善治　　第二部小頭　佐々木寅之助　第三部小頭　千葉伝五郎
　　各部消防手　三十名ズツトセリ
　現消防組幹部次ノ如シ
　○組頭＝小野寺登　○第一部長＝阿部興治　○第二部長＝阿部長七　○第三部長＝千葉胤介


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底本：「復刻　眞瀧村誌」
　２００３（平成１５）年６月１０日発行
発行者　眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表　蜂谷艸平
　２００４年３月１０日作成